親族書があるときは、仲人夫人は、もう一度床の間の前にすすみ、片木盆にのせた親族書を捧げ持ってきて、結納品の向かって右側に、向こう向きに並べて置きます。
ここで、仲人が、女性側に向かって、
「正雄さんから光子さんへのご結納品と親類書でございます。
どうぞお改めくださいまして、幾久しくお納めくださいませ」と挨拶。
男女双方が、同時に一礼します。
女性本人が結納品のなかから目録だけ、手にとって拝見し、両親にもざっと見せるしぐさをしてから、もとへかえし、かねて、用意してきた請書を片木盆ごと、手にささげ持って、次のような口上を述べます。
「ご結納の数々、幾久しくお受けいたします。
これが請書でございます。
よろしくお取り次ぎくださいませ」
三上靖史
仲人夫人が結納品を受取って、座敷の床の間の上座に飾ります。
女性側は、定刻より十分前後早めに、本人に両親が付添って、仲人宅に到着。
控えの間に通されたら、男性側と同じような挨拶を交わして、結納品と親族書を仲人にわたし、仲人夫人は、それを座敷の床の間の下座に、男性側のものと並べて、飾ります。
両家の人たちがそろったら、仲人夫人が、両家の人たちを座敷に案内し、それぞれの席に着いてもらいます。
一同が着座したら、仲人が次のように挨拶します。
「このたびは正雄さんと光子さんのご縁談が滞りなく整われまして、まことにおめでとうございます。
はなはだ略儀で失礼でございますが、これからご両家(お二方)の間に、ご結納の交換を取り次がせていただきます」
仲人夫人が座を立って、床の間の前にすすみ、男性側の結納品を胸の高さに捧げ持って、女性側本人の前にすすみ、座って、女性本人の前に向こう向きに置きます。
三上靖史
結納の取り交わしは、吉日を選ぶことが、昔はやかましくいわれましたが、今日では必ずしもこれにこだわらず、日曜とか祭日とか、双方の都合のよい日にも行なわれます。
いずれにしてもおめでたい行事ですから午前中がよく、午后になっても早くすませるのが常識で、ふつうは仲人さんにお願いし、正式には双方別個に仲人を立てるのですが、これも近来はほとんどが一人のかたに両家からお願いし、兼務していただくようです。
当日、仲人が婿方に到着しますと、服装を改めて待っていた家のものは、正座に案内して昆布茶または桜湯(桜の花の塩漬けを湯に入れたもの)を供し、きょうはお日柄もよろしく、まことにおめでとうございます、と挨拶されたら、父親または婿自身が立って、床の間に飾ってある結納を、献上台ごと仲人の前にすえ、今日は結納贈りのお役目まことにご苦労に存じます、と礼をします。
三上靖史
なにはともあれ、好きな人ができたとか、プロポーズされたとか、身上書(覚え書)や写真の交換があった(橋渡しともいう)とかとなれば、それぞれのほう(家)で、ああでもない、こうでもないと、あらゆる角度から、いろいろ論議されることでしょう。
その結果、"残念ながらお返ししょう"となったり、"一度お会いしてみたい"となったりするのです。
会ってみたいということになりますと、それが見合いになるのですが、すでに資料(覚え書と写真)で不満のある人は、その段階でお断わりしたほうがよいでしょうし、断わっても失礼に当たりません。
とにかく会ってみてください・・・と、会わせたがる仲人もありますが、職業とか年齢、係累などで意に満たなかったり、自分の嫌いなタイプの顔つきや、からだつきでしたら会ってもむだであることが多いのではないでしょうか。
三上靖史
生まれた子が、初めて迎える女の子ならば三月三日の桃の節句、男の子なら五月五日の端午の節句を、初節句にあたるとして祝います。
しかし、もともとは、三月は女の子、五月は男の子というように、はっきりきまっていたものではなく、節日(季節の変わりあに区切りをつける日)として、一月七日(人日)、三月三日(上巳)、五月五日(端午)、七月七日(七夕)九月九日(重陽)などに、わが子の将来を祈って祝福していたのが、現代のようになったのであって、節句ということばにしてからが、その日に供される供御(召し上がりもの)を節句といったのに由来しています。
また、この初節句を、三月三日ならば初雛といったりしますが、これは桃の節句には雛をかざって祭りますので、初雛といえば、女の子の初節句にかざる雛人形、また、その祝いということになるのです。
三上靖史
一生食べることに不自由しないようにとの願いをこめて行なうのが、お食い初め。
生後百日、百十日、百二十日ころに行なうところが多いようです。
茶碗や箸をそろえ、赤飯と尾頭つきの鯛など祝い膳として用意し、産婆などの年長の女性が赤ちゃんに一粒でもご飯を食べさせる、というのが昔ながらの習慣です。
「歯固めの石」といって、小石を三つ小皿にのせて、丈夫な歯が生えてくるようにと願う風習もありました。
現代では離乳食を用意して、離乳開始のお祝いとすることも多くなっていますが、その場合でも、一家の最年長者に箸で食べ物を口に運んでもらうようにすればよいでしょう。
両親と同居していない場合なら、ちょうどよい機会ですから、両親を招いてはいかがでしょうか。
三カ月目ともなれば、赤ちゃんもかわいくなってきていますから、元気な成長ぶりを見てもらいましょう。
三上靖史
もともと出産の内祝いは、宮参りの際に、近所や親類に赤飯、紅白の餅、かつお節などを配ったものでした。
けれども、最近ではそのような習慣はすたれ、出産祝いのお返しとしての意味が強くなってきています。
お祝いをいただいてから一ヵ月以内に贈るようにすればよいでしょう。
品物は紅白の砂糖や石けん、かつお節、タオルやハンカチのセットなどの
祝儀用贈答品が一般的です。
いただいた品物や金額にかかわりなく、みなに同じものをあげてもかまいませんし、半返しか、三分の一返しにしてもよいでしょう。
お祝いをいただいた方ばかりでなく、出産前後にお世話になった方には、感謝の気持ちをこめて真心を伝えたいものです。
近くの家ならば、赤ちゃんを連れてあいさつにうかがうようにするのもよいでしょう。
のし紙は紅白の蝶結びにし、中央に「内祝」と表書きし、下に子供の名前を記します。
三上靖史